遺伝子組換え技術 (2002/11/15)
最近、誰だかは覚えていませんが遺伝子組換えを「農家の自立を妨げる」ものとして断固反対を訴える人が公演をしたそうです。どうやら日本のイネの遺伝子組換え技術について警告したとか。
遺伝子産業にはBio-Ethics(生命倫理)の問題が付きまといますし、生命の根本を操作するのですからどんな事がおきてしまうかも完全には把握できません。また、米国などでは「ターミネ−ター」と呼ばれる技術を農作物に組み込んで、企業の利益を守ろうとしています。それは、自社の作った組換え作物の種子が波及しないように、作物に実った種子が発芽しないようにした技術です。だから毎年農家は企業から種を買わなければいけないので、自立を妨げられるのです。
また、ゲノム解析が遺伝子組換えには重要です。解析したゲノムで特許申請してしまえば、その作物を研究する際には特許料を支払わねばなりません。ゲノム解析ブームによって、イネのゲノム解析の特許が他国に取られてしまえば、日本人の主食の品種改良等に将来ゲノムが利用される時、多大な損失をこうむります。少なくとも、日本がゲノムの特許を持っていれば、国内での特許料の無償化の運動なども比較的容易に行えると思います。日本の主食は日本が守るべきなのです。
それから、よく安全性なんかも問われます。事実、昭和電工の作った「トリプトファン(たんぱく質の一つ)」では米国で5000〜10000人に被害・39人死亡という事件が起こり、1200億円の和解金を支払ったようです。安全の基準も、もとの非組換え作物との相対評価による「実質的同等」しか示せないのです。
しかし、遺伝子組換えの研究は、続けるべき、いや、続けねばならないと思います。
1つには、人口爆発への対応として有力だからです。主食は勿論、現在では「食べるワクチン」なども作られています。エイズを予防するバナナなんていうのもあるようです。これらは、非常に安価で、かつ、大量に作れ、そして何より注射よりも用意にワクチンを摂取できます。エイズなどは所得の低いアフリカなどで最も起きていますから、安価・量産というのは大きな魅力です。また、食料についても、高い生産性をあげる事も、栄養価を上げる事もできるのです。
少し考えてみましょう。私たちは飢餓には縁があまりないと思いますが、現在の地球の人口支持力では60億人は限界を超えています。つまり、飢餓の状態にある人が大勢いるのです。もし自分が親だとしたら、子供の飢餓や栄養失調・病気を放っては置けないでしょう。たとえ「今の所危険性は見つかっていない」という食品でも、ワクチンでも、それでも私なら見殺しにするよりは、まさに「藁にもすがる」心境ですから、子供に与えると思います。ある意味では先述の懸念は、先進国の戯言なのかもしれません。
もう1つには、環境問題解決への寄与が期待される事です。耐寒性・耐乾性・耐塩性などの性質を植物に持たせる事で、極地・砂漠などの厳しい条件の場所も緑化が期待できるのです。また、光合成速度を上げる事も期待できます。ただし、生物界にない生物を自然界に送り込むわけですから、まだまだ遠い年月を必要とするでしょう。
しかし、以上の理由より、私はこの技術とは上手く付き合うべきであるとおもいます。
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